21枚目のマキシシングル「夢・花火」は久しぶりのアップテンポな切ないナンバー。実は一年前に完成間際まで進めていた楽曲。納得できるものを創り直そうとアレンジなどをやり直して温めていた楽曲。大ヒットした「夢見たあとで」も同じように制作期間が長かった曲でメンバーもこの一曲を大事にしていた。
美しく儚いもの、儚い命・・・人々が忘れてしまった心を記憶をもう一度思い出せるように感じることができたらいいと思う。夢も魅ては忘れ、忘れては魅る美しく儚いもの、花火もどこか似たようなところがある。夢のように散ってしまう花火、花火のように儚い夢そしてもう一つ儚いもの「命」である。
人々の忘れてしまった尊さの心。命の儚さを知る心。知らぬ人へ感じる切なさ。曲をとおして感じることは人それぞれだが、争うことで唯でさえ儚い命を奪ってしまうことに感じる切なさ・・・平和への願い。感じてほしいことはもっとあるだろうがそれは実際に聴いてみてから考えるといい。
曲中の花火のイメージはどちらかというと儚さよりも「情熱」や炎が燃える「爆発するエネルギー」の力強さが感じられる。ボーカル中村由利の歌声も力強さが増し、特にPVでの後半の「彼方へと…誘い誘われて」のあたりでは夜空に舞う打ち上げ花火のような力強さが見られ、もの凄いエネルギーを感じることができる。
今回は初回限定盤と通常盤に分かれています。初回盤は特殊スリーブ仕様で立体的なつくりになっている。通常盤では美しく儚いものの象徴に「花」をモチーフに黒とオレンジのコントラストがとっても綺麗なジャケットに仕上がっている。(中村由利も気に入っている)
作詞はAZUKI七、作曲は中村由利、編曲は古井弘人。
...TI amo... から始まる4分ほどの短い曲。前作「籟・来・也」を連想する笛の音色と「僕らだけの未来」を連想するラテンテイストのスピード感の在る楽曲です。ちなみに「ti amo」は ti 君を amo 愛してる という意味のイタリア語らしいですね。この曲をボーカルの中村由利さんが作ったときはイタリアのカンツォーネ(イタリア民謡・ナポリ民謡)をよく聴いていたときのものらしいのでその影響でしょう。
夢や花火ということで色鮮やかな空想の世界が描かれているのかと思っていたが、意外にも現実味のあるストーリーかもしれない。"この身は夢・花火"と歌われているように「闇夜に打ち上げられ儚く散ってしまう主人公」が描かれる。打ち上げられるとどこへ行ってしまうのか「ワカラズ」彷徨ってしまう花火。その運命を待つ花火だ。
夜空へ舞う時を「恋をする」ことに例えると、何もしていない何も始まっていないのに振り返ることは早いし、憧れるような恋愛をするのには遅かったのだろうし、これから訪れることへの不安は気持ちを重くする。それでも何もせずに過ごしてしまうよりは・・・(この身は夢・花火だから)
ここからは歌詞を逆に読んでいく。"愛を知る旅にでるのなら"と歌われる「恋愛を経験する過程」で辛く苦しい「痛み」はあふれるようにあなたを襲い、波のように押し寄せ溺れさせてしまうかもしれないけれども"情熱"で火を灯せ。私は花火だ。振り向かないで空を目指せ・・・
恋する相手は誰だろう。あなたの思いを寄せる人はどんな人。儚げな嘘も似合う少女ですか。狂おしげなほど愛してしまった魅力のある、嘘も許せてしまう愛しい人なのでしょうか。周りが見えなくなるくらい花火のように真っ直ぐ向かってしまう恋心を抱いてしまうような相手なのでしょうか。
そんな過去も人々は思い出と呼んでしまうのでしょう。辛くて苦しくて狂ってしまいそうな時だって過ぎてしまったら何もなかったように振り返ることが出来る。人の心は儚いものなのですね。恋の歌は夏の夜に終わってしまった。恋愛は突然終わることもある。原因や理由はその瞬間に気付くことはできないだろう。恋をしている間は熱を持っている。冷静になることができないのだ。
そして冷静になり気付いた時に自己崩壊を起こしてしまう。いっそのことどうにかなってしまったほうが良かったのかもしれないと・・・その情熱の炎で焼き尽くしてしまえばよかったのに・・・私なんてどうにでもなってしまえばいいんだ・・・などと悲観的に物事を考えてしまう。失恋したときはそういう気分になってしまう。
自らそういう道を選んだのかもしれない・・・この身は夢・花火。いつものありふれた朝を迎えるよりも花火のように美しく儚く夜空に咲いて散ってしまった方がいい・・・そう考えられずにはいられなかったのかもしれない。恋とは必ずしも花火のように儚く散ってしまわなければならないのでしょうか・・・
例え小さな恋でも夜空のように暗い場所では綺麗に映し出してしまうのです。夜空を舞う花火だけが恋ではないですよね。でも華麗に散る花火のような恋をしてみたいものです。だって私は夢・花火なんだから・・・夜空の"彼方へと・・・誘い誘われて"追いかけていく。
最後の英語の部分ですが、"コール マイ ネーム"私の名前を呼ぶ、"アイ ヒア ヒズ ボイス"彼の声を聴く、"サウンド イズ"音は、"ディープ ジャスト フォロー"深くただ続いていく、"ユア アイズ"あなたの目、となります。区切りがおかしいかもしれませんし意味が通らないかもしれない。ちなみにカップリング曲の"his voyage"は彼の船旅。"ring ring a ding"は鐘の音をリンリン ディーンと鳴らした感じそのままです。
全体としてのメッセージは花火のように儚い恋を身を焦がすような情熱で打ち上げる。夜空に一度だけでも咲いて散ってしまった方がいいじゃない。どうせ人はそれを過去と書いて思い出と歌うでしょう。ならその方がいい・・・花のように永遠ではなく一瞬の美しさ儚いものにこそ価値を感じる。恋も同じなのでしょうか・・・
イタリア民謡ナポリ民謡を指すことが多い。ナポリはピザ発祥の地。学生時代に歌ったカンツォーネに「帰れソレントへ」という曲がある。とてもいい曲だったのを覚えている。
GARNET CROW『インタビュー初登場!中村由利が楽曲へのこだわりを語る』-ORICON STYLE WM ミュージック